オシロスコープを使用する上で注意点として周波数帯域・特性があります。
もし周波数帯域を守らない場合、測定波形にどれほど影響あるのか調査してみました。
シミュレーション・実際の波形を踏まえて分かりやすく紹介します。
オシロスコープの周波数帯域を超えての測定はNG?実際に確認してみた
オシロスコープの周波数帯域を超えて波形測定をしてみました。
オシロの周波数帯域が50MHzに対して、約4倍のUSB2.0(480Mbps_最大240MHz)で確認しました。
もちろん測定結果はNGです。正常な波形は測定できません。
時間軸最大に広げた波形ですが、Hi(1)/Low(0)の波形が全く分からない波形です。
周波数特性により高周波帯で信号が減衰してしまうためです。
(USB2.0で正常な測定が出来ないのはインピーダンス含めて他にも多くの要素がありますが…)
インピーダンス不整合による波形への影響に関しては下記記事でも紹介しています。
実際にオシロの周波数帯域が測定波形にどのような影響を与えるのか調べてみました。
趣味のレベルですがLTSPICEのシミュレーション含めて影響具合を確認しました。
測定方法・シミュレーション内容含めて詳細を紹介していきます。
オシロスコープの周波数帯域とサンプルレート
最初にオシロスコープの重要なスペックである周波数帯域とサンプルレートについて紹介します。
例として筆者のオシロは「周波数帯域_50MHz」「サンプルレート_1GSa/s」です。
高価なオシロになればなるほど、周波数帯域・サンプルレートの値は大きくなっていきます。
今回紹介しているオシロスコープの詳細については下記記事で紹介してます。
よろしければご覧ください。(リンク先はこちらから)
オシロスコープの周波数帯域の意味
周波数帯域は凄く簡単に言うと、オシロが「測定できる周波数の上限(の目安)」です。
(※厳密の意味で言うと3dB(電圧として約30%)減衰する周波数を示します。)
周波数帯域が高いほど高速な信号が測定可能になります。(値段も高額になりますが…)
個人のオシロスコープでも多くの波形を測定可能
筆者のオシロだと(周波数帯域の)50MHz以内の周波数ならば波形測定ができます。
低い周波数でいうと、交流100Vの60Hzの測定も下記記事で紹介させてもらいました。
またシリアル通信の4800Hz(9600bps)や57600Hz(115200bps)も下記記事で確認しています。
USBシリアル通信のボーレートの最大は?通信速度(bps)をオシロで確認
USBのハイスピード240MHz(480Mbps)は無理ですが、フルスピード6MHz(12Mbps)は測定可能です。
下記記事でフルスピード含めてUSBを測定しています。
USBのフルスピードとハイスピードの切り替えをオシロで確認してみた
上記例のように個人的なオシロの周波数帯域の50MHzレベルでも多くの波形を測定できます。
オシロスコープのサンプルレートの意味
オシロのサンプルレートについては波形のサンプリングのスピードを意味しています。
サンプルレートの詳細・注意点は下記記事で紹介しています。
よろしければご覧ください。(リンク先はこちらから)
オシロスコープとプローブの周波数帯域
「なぜオシロスコープの周波数帯域を守らないと減衰する?」について少し掘り下げていきます。
シミュレーションして確認していきます。
オシロスコープ、そしてプローブにはそれぞれに周波数帯域がありますので個別に紹介します。
オシロスコープの入力インピーダンス
オシロスコープの周波数特性は入力インピーダンスが大きく影響してきます。
筆者のオシロスコープの入力箇所には1MΩ抵抗と13pFのコンデンサが平行に接続されています。
この入力箇所の特性が入力インピーダンスになります。
オシロの周波数特性をシミュレーションしてみる
実際にシミュレーションしてオシロスコープのみの周波数特性を確認してみます
筆者のオシロのデータシートには「帯域幅(-3dB)50Ω_直流50MHz」の表記があります。
そのため50Ω接続した場合のAC特性を確認しています
あくまで筆者の個人的なシミュレーションになりますが、下記結果となりました。
50MHzまでは特に問題ありません。100MHz辺りから減衰する特性となっています。
-3dB箇所に関しては約240MHzとなりました。
今回のオシロではUSBのハイスピード240MHz(480Mbps)は測定出来なさそうです。
理想的なシミュレーションでも-3dB減衰(電圧としては約30%低下)してしまいます。
プローブの入力インピーダンス
プローブにも入力インピーダンスがあり、周波数特性を持っています。
筆者のもですが、10:1パッシブプローブには抵抗と調整用コンデンサが付いております。
抵抗は9MΩ、調整用のコンデンサは数pF~10数pFとなります。
またプローブに関してはケーブルのコンデンサ成分も考慮する必要があります。
(上図では適当にC6の箇所で77pFと決めています)
プローブの周波数特性はデータシートより確認
プローブのシミュレーションはケーブル容量などパラメータが不明な箇所も多いので手間です。
今回はプローブのデータシートのインピーダンス特性図を参照します。
(メーカHPのデータシートリンク先はこちらから)
1KHzから減衰して100MHz~1GHzには(元々10MΩが)100Ω程度まで減っています。
プローブのデータシートを見ても10:1で周波数帯域は150MHzまでということでした
プローブの方でもUSBのハイスピード240MHz(480Mbps)は難しい旨が分かりました。
高速信号を測定するには専用のオシロ・プローブが必要
筆者のオシロでは高速信号(数百MHz,数GHz)の測定が難しいことが改めて分かりました。
周波数特性含めて多くの要素で数万程度の趣味のオシロではハードルが高いです。
USB2.0のような数百MHz以上の高速信号を測定するには専用のオシロ・プローブが必要です。
非常に高価なオシロスコープ・プローブとなります
ちなみに筆者が現在使用している同じメーカでUSB2.0 が測定できる測定器が下記になります。
数百万円の高価なオシロ・プローブのため、個人の購入は難しいですが参考に貼り付けておきます。
USB2.0をデバッグレベルで測定する
ただ単にオシロスコープのスペックだけで「測定できません」は(筆者が)面白くありません。
そのため数百MHz帯のUSBハイスピードを測定出来る箇所がないか確認してみます。
USBハイスピードのマイクロフレームを確認する
USB2.0のハイスピードといっても常時240MHz(480Mbps)で通信しているわけではありません。
USBハイスピードは125us周期で定期な(マイクロ)フレームを送っています。
上記のような定期的な信号からUSB2.0の動作確認が可能です。
USBフルスピードの定期的なフレームは1ms
ちなみにUSBのフルスピード(12Mbps)の定期的なフレームは1msで送信されています。
定期的なフレームからでもハイスピードとフルスピードを見分けれます。
(もちろんD+のプルアップからでもフルスピード(12Mbps)と分かります。)
USBハイスピードの電圧レベルを400mVを確認する
USB2.0のハイスピードの電圧レベルはD+,D-それぞれで400mV±10%となっています。
そして(D+)-(D-)の差動で±400mVとなります。信号がHi(1)を続いてそうな箇所を確認してみました。
正直、かなり怪しい結果ですが大体400mVになっています。
USB回路をシミュレーションする
オシロの測定がかなり怪しかったのでシミュレーションでフォローします。
USBハイスピードの回路をLTSPICEで簡易的に作って確認してみました。
(USBドライバっぽい電流源を作り、「101010…」の240MHzの信号を送っています)
理想的には下記結果のように電圧レベルは400mVになるはずです。
まとめ
今回の記事をまとめますと下記になります。
会社や研究所が所持している高価なオシロスコープでないと高速信号の測定は難しいです。
しかしデバッグ・勉強ならば趣味レベルのオシロのRIGOL DS1054Zでも可能です
よろしければ皆さまもオシロスコープを触ってみてください
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