インピーダンス不整合と反射の影響をオシロとシミュレーションで確認

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LTSPICE

インピーダンス不整合と反射の影響を調査してみました。

シミュレーションに加えて、実際のオシロスコープでも確認をしています。

実際に反射が起きてしまった場合の波形への影響具合を分かりやすく紹介します。

 

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インピーダンス不整合と反射の影響をオシロとシミュレーションで確認

USBフルスピード(12Mbps)をオシロで測定時に反射波形を実際に確認しました。

 

USBケーブル中間地点で測定していたので綺麗な反射の影響が出ています。

 

10:1のパッシブプローブで測定しており、波形への影響も確認しました。

 

実際に測定した環境をシミュレーションして実際の波形が成立するか確認しています。

 

おおよそですが実際の波形とシミュレーション結果が合う形になりました。

 

実際の波形の測定からシミュレーションの方法まで詳細を紹介していきます

 

特性インピーダンスの整合が取れていないと反射する

最初に簡単なシミュレーションをして特性インピーダンスについて紹介します。

今回は実際に測定したUSBフルスピード(12Mbps)の回路をベースにシミュレーションします

 

本来は一番普及しているUSB2.0のハイスピード(480Mbps)で測定するのがベストです。

しかし筆者のオシロでは480Mbpsは測定できないため,12Mbpsのフルスピードで確認します。

 

480Mbpsの測定が難しい件に関しては下記記事で紹介しています。(リンク先はこちらから)

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シミュレーションの回路構成を確認

USBフルスピード(12Mbps)の回路図としては下記形になります。

ホスト側はD±の両方が15kΩでプルダウンされ、デバイス側はD+のみ1.5kΩでプルアップしてます。

 

実際の波形としてはパケット全体でみると綺麗な方形波が並んでいるように見えます。

 

しかしアップして波形を確認すると段付きの反射波形が見えたりします。

測定が下手だと綺麗な立ち上がりが見れないケースがあります。

 

USBのフルスピードの詳細に関しては下記記事で説明しています。(リンク先はこちらから)

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ケーブル含めた特性インピーダンスのシミュレーション

もともと紹介していた回路図はUSBのホストとデバイスを接続した簡易的なモデルです。

(あくまでUSB回路の説明用モデルのため、細かい箇所までは作りこんでいませんでした)

 

重要な測定箇所のUSBケーブル含めたシミュレーションのモデルに修正します。

変更点としては下記です。

  • USBホスト側で出力インピーダンス45Ωを設定
  • USBケーブルのtlineモデルを追加
  • 説明用の簡易的な差動モデル(DP,DM)を削除
  • シミュレーションの簡略化のためD+箇所のみピックアップ

 

もちろんシミュレーションは無料で出来るLTSPICEを使用しています。

 

LTSPICEでケーブル特性入れたい場合はtline

LTPSICEでケーブルの特性を入れ込みたい場合はtlineが便利です。

(LTSPICEをインストールすればデフォルトでコンポーネントシンボルの中に入っています)

 

ケーブルの遅延時間とインピーダンスを入れるだけでそれなりのシミュレーションが出来ます。

 

本来はケーブル遅延時間なども計算すべきなのですが、今回は適当に5nsにしています。

USBの差動インピーダンスは90Ωで、今回はD+のみのシングルのため45Ωを入力しています。

 

USBの特性インピーダンスは差動90Ω(シングルエンド45Ω)

USB2.0のケーブルの差動インピーダンスは90Ωとなっています。

(シングルエンドだと45Ωです)

 

またUSBフルスピード(12Mbps)のホスト側の出力インピーダンスも45Ωとなっています

 

USB2.0の規格書はダウンロード可能

インピーダンス含めてUSBの詳細に関しては規格書を参考ください。

USBは特に登録不要で、USB規格団体のHPから誰でもダウンロードすることができます。

(英語ですがリンク先はこちらから)

 

特性インピーダンスが整合取れている場合のシミュレーション

LTSPICEのシミュレーション環境も整いましたので確認していきます。

最初にUSBのインピーダンス整合が取れている場合を試してみます。

 

「出力インピーダンスが45Ω」「ケーブルのインピーダンスも45Ω」の状態です。

シミュレーションは下記結果のように(反射なく)綺麗な波形となっています。

 

特性インピーダンスが整合取れていない場合のシミュレーション

特性インピーダンスの整合を崩していきます。

出力箇所に関してはUSB内部で弄る要素が基本ないのでケーブルを調整していきます。

USBケーブルのインピーダンスが異常(≠45Ω)の10Ω、50Ω、100Ωを確認します。

 

USBケーブルのインピーダンスが50Ωだった場合

USBケーブルのインピーダンスを45Ω→50Ωに少し変更したシミュレーションです。

 

45Ω→50Ωという僅かな変化でも、オーバーシュート,アンダーシュートの波形が見られました。

 

USBケーブルのインピーダンスが100Ωだった場合

USBケーブルのインピーダンスを45Ω→100Ωに大きくしたシミュレーションです。

 

45Ω→100ΩとなるとOS/USのレベルも大きく、反射を繰り返していることが分かります

 

USBケーブルのインピーダンスが10Ωだった場合

USBケーブルのインピーダンスを45Ω→10Ωにかなり小さくしたシミュレーションです。

 

インピーダンスを小さくした場合は、反射を繰り返して電圧が上昇・下降する結果です。

 

反射係数の計算から波形が分かります

シミュレーションで示した反射の電圧値ですが、計算からも出すことが可能です。

反射係数Γをインピーダンス値から下記計算式で算出可能のためです。

$$反射係数:\Gamma=\frac{Z2-Z1}{Z2+Z1}$$

$$反射波:V1=\Gamma・V0 透過波:V2={1+\Gamma}・V0$$

 

反射波と透過波を計算してみる

先ほど紹介したケーブルのインピーダンスZ2=100Ω(←45Ω)にした場合で確認してみます。

反射波・透過波のイメージとしては下記になります。

今回は透過波の箇所でシミュレーションの結果を確認しています。

 

反射係数の値はZ1=45Ω,Z2=100Ωですので計算するとΓ=0.38となります。

そのため1回目の透過波のV2=(1+Γ)×V0=(1+0.38)×3.3=4.55 と計算できます。

(何回か反射が繰り返されて3.3Vに収束していく)

シミュレーションと若干値が合いませんが、あくまで理想形な計算式のためです。

 

USBフルスピード(12Mbps)のプルダウン,プルアップ抵抗が影響しています。

(プルダウンで僅かに分圧されたり、プルアップの方で僅かに反射していると思われます)

USBのプルダウン(15kΩ),プルアップ(1.5kΩ)を省略した場合が下記です。

 

理想状態のシミュレーションモデルでは計算値と同じ値になります。

 

反射係数を学ぶ上で参考になったサイト

反射係数を学ぶにあたり、非常に参考になったのは下記記事です。

多重反射と終端抵抗の関係

上記サイトの管理者様・運営者様にはこの場を借りて御礼申し上げます。

 

オシロスコープの波形歪みの原因は?

ケーブルのインピーダンスの値を変えて整合・不整合の波形を確認しました。

しかし今回のオシロの測定で出ていた対称になっている段付きの波形とは違っています。

 

シミュレーションモデルとオシロで測定した波形の歪みの帳尻を合わせていきます。

 

ケーブルの伝送遅延による反射

今回の測定ではUSBケーブルの中間地点で測定してます。

ケーブルの中間地点での測定をシミュレーションの条件にいれこみます。

 

USBケーブルのモデルを2か所に増やしました。

(本来ケーブル長が半分ならば遅延時間も半分にするべきだが省略)

 

シミュレーション結果は下記となり、実測と合う形になりました。

本来の測定箇所であるデバイス側(緑色)の波形は反射なく綺麗な波形になっています。

オシロで測定した箇所(青色)は実測と同じように反射が起きて段付きの波形となっています。

 

段付きの波形を計算してみる

今回の実測・シミュレーション結果のように段付きの波形になる理由を確認してみます。

 

まず今回の回路の反射係数の計算のイメージが下記形になります。

(終端が1.5kΩと記載していますが、OPENの無限大のイメージでも構いません)

 

送信側から電圧が伝送される

まず最初に送信側から伝送遅延分遅れて電圧が伝わってきます。

今回のシミュレーションの値は5nsです。

最初に伝わる電圧は出力インピーダンス(Rs)とケーブルのインピーダンス(Z0)から計算できます。

 

インピーダンス整合とれている箇所(反射係数Γ=0)は素通りしていくイメージです。

 

受信側の終端で反射される

その後更に信号が伝送され、受信側で反射されてきます。(終端側が反射係数Γ≒1のため)

伝送遅延時間の後に反射波が返ってきますので段付きの波形となります。

 

反射波・透過波に関しては先述した計算式から出すことが可能です。

 

段付きの波形の対策

測定位置が悪くて段付きになる対策には「終端箇所で測定」です。これが一番だと思います。

 

インピーダンス整合が取れた終端位置で測定すれば正しい波形が取れます。

 

高速信号を伝送路の中間位置で測定するのが間違っているのでやめた方が良いです

 

パッシブプローブの測定への影響を確認する

今回の反射波形の原因は測定箇所の問題でした。

一応10:1のパッシブプローブの影響がないかもシミュレーションで確認しておきます。

 

パッシブプローブのシミュレーションする

シミュレーションのプローブ箇所のモデルを追加します

 

単純にケーブル中間で測定したときと段付きに加えて、若干反射しましたが影響は小でした。

 

10:1で入力インピーダンスとしては10MΩあるため、回路への影響は少なかったようです。

 

オシロスコープの測定箇所を終端抵抗に移動した場合

最後にプローブ位置を終端箇所に持っていた場合、波形が改善されるか確認します。

 

シミュレーションでも段付き・反射が見られず、綺麗な波形になりました。

 

やはり12Mbps(USBフルスピード)でも測定箇所は気を付ける必要があります。

 

まとめ

今回は12Mbpsの速度帯でも測定位置が悪いと、簡単に反射する旨を紹介する旨を紹介しました。

記事をまとめますと下記になります。

信号の測定は終端箇所で行うのがベスト。中途半端な位置だと反射します
インピーダンス不整合はシミュレーションすることができます
反射係数・反射波・透過波は計算でも確認可能です

 

計算・シミュレーションだけでなく実測して反射波形を確認すると非常に勉強になります。

筆者のRIGOL DS1054Zは趣味・勉強にちょうど良いオシロかと思います。

下記記事でも紹介していますので、よろしければご覧ください。(リンク先はこちらから)

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