PoE給電中のLANケーブルの電圧を測定してみました。
ハブが対応機器を検出して供給するまでの流れ含めて確認しています。
PoE給電の仕組みを分かりやすく紹介します。
PoE給電の仕組み!LANケーブルの電圧を測定してみた
PoE給電を試してみました。
PoEハブからのLANケーブルで電源供給してラズベリーパイを起動しています。
LANケーブルを改造してテスターで電圧測定すると、PoE給電の48Vを確認できました。
オシロスコープでも測定して、PoE給電の仕組みも確認しました。
PoE給電の仕組みの詳細を紹介していきます。
下記動画でも紹介してますので、よろしければ一緒にご覧ください。
PoEとは
PoEとはPower over Ethernet の略称でLANケーブル経由で電力を供給する技術です。
概要だけ簡単に紹介します。
通常LANケーブル内にはデータしか送りませんが、PoEでは給電もします。
LANケーブルの信号線を使って電力供給することになります。
PoE給電するLANケーブルに関しては市販のケーブルでOKです。
下記記事でLANケーブルの距離・種類のPoEへの影響を確認しています。(リンク先はこちら)
PoEの規格
PoEの規格はIEEE802.3afで標準化されています。
(PoEの次の規格になるPoE+(IEEE802.3at)、PoE++(IEEE802.3bt)などもあります)
英語になりますが,PoEの詳細はIEEEのHPにも資料が置いてあります(IEEEのHPはこちら)
PoEの設定は特に必要無し
PoE給電するだけならば特に設定する必要はありません。
専用のPoE機器をLANケーブル接続すれば自動的にラズパイに電源が入ります。
今回のテスト構成でもLANケーブルを繋げただけです。
電源ケーブル無しでラズパイの起動を確認しています。
この状態にてラズパイのコマンドでイーサネット(有線LAN)の状態を確認しました。
しっかりイーサネットとしては「1Gbps_ギガビットで通信(リンクアップ)」していました。
コマンド結果は下記です。LANケーブル1本で「電源」と「通信」が成立しています。
1 2 3 4 |
[ 16.122081] IPv6: ADDRCONF(NETDEV_UP): eth0: link is not ready [ 17.191719] bcmgenet fd580000.genet eth0: Link is Down [ 21.351950] bcmgenet fd580000.genet eth0: Link is Up - 1Gbps/Full - flow control rx/tx [ 21.351969] IPv6: ADDRCONF(NETDEV_CHANGE): eth0: link becomes ready |
PoEがギガビット(1000base-T)で電源供給できる仕組み
イーサネットのギガビット通信ではLANケーブルの信号線の4対(8本)全て使います。
イーサネットの通信に関しては下記記事で紹介しています。(リンク先はこちら)
ギガビット通信でLANケーブルの信号線を全て使用していますが、電源供給もPoEでは可能です。
理由は「通信」と「電源供給」を同じ信号線で実施しているためです。
正直な所、結構イメージしにくいと思います。
対になっている差動信号線を上手く使うことで「通信」と「電源供給」を両立しています。
- 「通信」は(差動)信号線の「電圧差」を利用
- 「電源供給」は(差動)信号の「電圧中点」を利用
PoEの通信速度への影響も下記記事で確認しています。(リンク先はこちら)
「電源供給」することによる「通信」への影響はありませんでした。
PoE給電の構成
今回筆者のテストでの構成を紹介していきます。PoE給電するには専用の機器が必要です。
PSE(給電)とPD(受電)
PoEでは電力を送る(給電)側を「PSE」、電力を受け取る(受電)側を「PD」とよく表記します。
今回のテスト環境は下記構成です。
- PSE(給電)…PoEスイッチングハブ
- PD(受電)…ラズベリーパイ4 + PoE HAT
- LANケーブル…カテゴリ6(カテゴリ5e以上ならOK)
PoEスイッチングハブ
PSE(給電)側の機器はPoEスイッチングハブを使用します。
今回使用したのはTP-Link製PoEハブ TL-SG1005Pです。
GbitEther対応かつ、4ポートでPoE給電が可能です。
本体は非常にコンパクトのハブです。ラズパイの約2台分ぐらいスペースです。
時々でテスト等で使うケースだと、このサイズ感が非常にうれしいです。
マニュアルにも記載していますがPoE非対応でも普通にイーサネットのハブとしても使用可能です。
ラズベリーパイ4+PoE HAT
PD(受電)側はラズベリーパイ4+PoE HATです。
PoE HATはラズベリーパイ公式から販売されているオプション品となります。
ラズベリーパイ単体ではPoE非対応ですが、PoE HATを装着すればPoE対応になります。
PoE HATは「ラズベリーパイ3B+」「ラズベリーパイ4B」両方に装着可能です。
(但しCPU以外のヒートシンクは外す必要がありました。)
またPoE HATの詳細・スペックなどは下記記事で紹介しています。(リンク先はこちら)
PoEの電圧をテスターで測定してみる
PoEの電圧は48Vと決まっていますが、本当にLANケーブルの電圧が48Vかを確認します。
LANケーブルの電圧を測定するために改造
電圧を測定するために、テスト用にLANケーブルを改造します。
ワイヤーストリッパーでLANケーブルの被膜を剥きます。
使用したワイヤーストリッパーに関しては下記記事で紹介しています。(リンク先はこちら)
LANケーブル内の信号線は細く非常に切れやすいので慎重に剥きました。
(フラットケーブルでは無い、普通AWG26線でも変に力をかけると簡単に切れます)
PoEの信号線と電圧
LANケーブル内には4対(8本)の信号線があります。
何処の信号線を使って電圧供給するかはPSE(給電)側で決められます。
電源供給のパターンは2つあります。(PD(受電)側はどちらでも対応できるようになっています)
- 1-2,3-6ピンを使う「Alternative A」
- 4-5,7-8ピンを使う「Alternative B」
専用のPoEテスター(チェッカー)を使えば「A」か「B」を判断出来るそうです。
今回は手間ですがテスターで両方の電圧を確認しました。
今回のTP-LinkのPoEハブに関しては「Alternative A」でした。
1-2,3-6ピンにワニ口クリップ経由でテスターに接続します。
(4-5,7-8ピンを測定しても殆ど電圧は出ていませんでした)
テスターでPoEの電圧を確認してみる
テスターを使ってPoE給電中の電圧を確認します。
テスターで電圧を測定したところ47.7Vでした。
LANケーブル経由でPoEにより48Vが給電されているのを確認できました
今回使用したテスターは下記記事で紹介しています。(リンク先はこちら)
PoE給電の仕組みをオシロスコープで確認してみる
PoE給電がどのような仕組みになっているかオシロスコープで確認したいと思います
PoE給電の開始直後の波形を測定します。
今回PoE給電の仕組みを参考にさせていただいたのは下記記事になります。
上記サイトの運営者様・管理者様にはこの場を借りて深くお礼申し上げます。
実際にオシロで測定した波形が下記となります。
PSE(給電)側がONしてから、PD(受電)側の検出・分類をした後に48V給電されます。
趣味のオシロでもPoEを測定することが可能です。
今回測定に使用したオシロは下記記事で紹介しています。(リンク先はこちら)
PoEの検出と分類
テスターでは給電後の電圧48Vしか分かりませんでした。
しかしオシロスコープではPoEの検出・分類まで確認可能です。
先ほどテスターで測定していたLANケーブル箇所にプローブを接続します。
PoE検出・分類をアップすると下記波形です。
今回のPoEでは複数回の検出・分類を繰り返している様子です。
(測定が下手で検出箇所がギザギザになっています。)
分類に関しての電圧は規定の15.5V~20.5Vを確認できました。
今回のPSE機器は約10msの間、約20Vの電圧を印加していました。
この分類でPSE側は流れる電流からPD機器のクラス(最大電力)を確認しています。
まとめ
今回はPoE給電の電圧・仕組みに関して紹介させていただきました。
記事をまとめますと下記になります。
PoEはLANケーブル1本で通信・電源供給する非常に面白い技術です。
PoE HATを使えばラズベリーパイもPoE対応でき、電源ケーブルが不要になります。
非常に楽ですので是非皆さまもPoEを一度試してみて下さい。
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