PoEのLANケーブルの長さ・種類を変えて電圧降下が起きないか確認してみました。
「AWG26のスタンダード_1m」と「AWG32のフラット_5m」で比較しています。
短い距離でもPoE給電する場合ではフラットがNGなのか確認してみました。
PoEでLANケーブルの長さ・フラットによる影響を測定してみた
PoE給電中の電圧を測定してLANケーブルの影響を確認してみました。
「AWG26のスタンダード_1m」と「AWG32のフラット_5m」の2つで比較しています。
PD(受電)側のトランス前でテスターで測定してみました。
信号線が太く・短いLANケーブル「AWG26のスタンダード_1m」では46.5Vでした。
信号線が細く・長めのLANケーブル「AWG32のフラット_5m」では46.2Vでした。
やはり若干電圧が下がり、「AWG26のスタンダード_1m」との差分は0.3Vでした。
今回は若干の0.3V電圧降下で済みましたが、あくまで一例です。
「数十mのケーブル」「大きな電流」等の場合には更に電圧降下が考えられます。
そのため太いスタンダードのLANケーブルを使用するのをおすすめします。
テストでの確認内容・詳細について紹介していきます。
PoE給電の詳細・仕組みに関しては下記記事で説明してます。(リンク先はこちら)
PoEは普通のLANケーブルで動作可能
通常LANケーブル内にはデータしか送りませんが、PoEでは給電もします。
LANケーブルの信号線を使って「通信」と「電源供給」を行います。
普通の市販で売られている数百円のLANケーブルでもPoE給電可能です。
実際に普通のLANケーブルPoE給電で機器の動作を確認できました。
PoEハブから給電してLANケーブル1本でラズベリーパイを起動できています。
ラズベリーパイでのPoE給電に関しては下記記事で紹介しています。(リンク先はこちら)
PoE専用のLANケーブルとの違い
PoE対応(専用)のLANケーブルも世間では販売されています。
例えば下記PoE対応ケーブルはAWG22というかなり太目の信号線を使っています。
普通(スタンダード)のLANケーブルは大体がAWG26です。
PoE対応のケーブルは数段階太くなっています。
(AWGの数字は小さいほど太いです。AWG22>AWG26)
信号線が太いことで抵抗値を下げることができ、PoE給電の電力損失を抑えれます。
「R(抵抗)=ρ(導電率)×ℓ(長さ)÷S(面積)」をイメージしてもられば良いかと思います。
(「信号線が太くなる」⇒「S(面積)が大きくなる」⇒「R(抵抗値)が下がる」)
LANケーブルの信号線が太いことはPoE給電にとっては大きなメリットになります。
(太い分、配線は面倒になりますが…)
PoEのLANケーブルはフラットでもOKか?
市販のLANケーブルにはフラットという種類もあります。
ケーブル線が平たく薄い形で配線しやすいメリットがあります。
但しフラットは信号線が細いです。基本的にはAWG32が多いです。
スタンダードのケーブルがAWG26ですので、6段階ほど細くなっています。
信号線の直径で比べるとAWG32はAWG26と比べて約半分程度になっています。
信号線が細いためケーブルの抵抗値も高くなり、PoE給電では不利になります。
個人的な実使用レベルでもフラットのPoE給電は難しいのかを確認したいと思います。
PoEの電圧降下を測定するための準備
LANケーブルの影響を確認するため、PoE給電の電圧測定を行う準備をします。
下記記事ではスタンダードのLANケーブルの被膜を剥いてPoE給電の48Vを測定しました。
しかしフラットの信号線AWG32は細く、剥くのは結構手間となります。
(上手い人は簡単に出来ると思いますが、筆者だと結構な確率で失敗すると思う…)
そのためPoE給電の電圧降下を確認できるポイントを別で用意したいと思います。
PoEのPD(受電)側で電圧測定をする
普通のPoE専用機器だと基本感電防止の意味含めて導体部は基本カバーされています。
下記記事で紹介したPoEスプリッター含めて、基本はPoE給電の48Vの測定箇所はありません。
ラズベリーパイをPoE対応にする機器PoE HATは導電部の一部が見える形状です。
「PoE給電の48V」を「ラズパイ電源の5V」に変換にするトランス箇所を測定できます。
但し、導電部は小さく普通には測定できないためICクリップを使います。
ICクリップで「48V」と「PGND(0V)」箇所を掴みテスターに接続します。
これでフラットケーブルでもPoE給電の電圧を測定できます。
PoEのPDの回路を確認してみる
PoE HATのトランス箇所を測定しますが、PD(受電)回路を把握する必要があります。
トランスの何処のピンが「48V」と「PGND(0V)」を確認するためです。
トランス下にあるPD(受電)コントローラIC(MP8007)のピン配置を確認します。
このMP8007は「PD機器としてのIC」「48V→5V変換IC」の役割を果たしています。
メーカはMonolithic Power Systemsです。(データシートはこちら)
パターンを見てみますと「48V」は確認できました。一番内側のピンです。
PGND(0V)は5ピンある2番目か4番目のピンのどちらかだと思われます。
(2-4でほぼ導通していましたので、恐らくフライバックのFBピンへの接続のようです)
一応(内側から)1-4ピンでPoE給電らしき電圧が測定できました。
(本当は微妙ですが、今回はLANケーブルでの差分が取りたいだけですので良しとします)
測定された電圧が「46.5V」と若干PoE給電の48Vより低い電圧でした。
恐らく整流のダイオードの影響だと思われます。
PD(受電)側はAlternative「A」「B」両方に対応するためダイオードが入っています。
ダイオードブリッジ2つ分の約0.7V×2=1.4Vと考えれば大体辻褄が合います。
ICクリップーワニ口は細かい電圧測定に役立つ
今回ICクリップを使っていますが、細かい測定に非常に便利なツールです。
特にICクリップ-ワニ口は細かい場所の電圧測定の際に便利です。
本来テスターでは当てられない密集しているピン箇所を測定可能です。
PoEのLANケーブルの長さ・種類を変えて電圧降下を測定
測定できる環境は整いましたのでLANケーブルでの電圧降下を測定していきます。
今回は筆者の手持ちの2つのケーブルで確認します。
- AWG32のフラット_5m(細くて長い)
- AWG26のスタンダード_1m(太くて短い)
LANケーブルからのPoE給電で動かすデバイスとしてはラズベリーパイです。
下記記事でも紹介しましたが、ラズパイ4のアイドル時の消費電流としては600~700mA程度です。
ラズベリーパイの電源のおすすめは?USBの電流を測定してみた
そのため今回のPoE給電の電力負荷としては5V×700mA=3.5W程度になります。
あくまで今回の試験は(負荷が軽い)一例ですのでご注意ください。
負荷が大きい・ケーブル長が数十mの場合は今回の結果以上の電圧降下が発生します。
AWG26のスタンダード1m
信号線が太く・短いLANケーブル「AWG26のスタンダード_1m」では46.5Vでした。
AWG32のフラット5m
信号線が細く・長めのLANケーブル「AWG32のフラット_5m」では46.2Vでした。
「AWG26のスタンダード_1m」と比較して0.3Vの電圧降下が発生しています。
但し、この電圧でもPoE給電の動作としては問題ありません。
PoEのPD(受電)機器として、規格としての37V以上の電圧で動くためです。
今回のような低負荷で数m程度ならば、フラットのLANケーブルでも動作します。
しかし新しいPoE+の規格だと最低電圧が42.5V~ですので、更に厳しい条件になります。
やはりケーブルでの損失が少ないスタンダードのLANケーブルを基本はおすすめします。
まとめ
今回はPoEのLANケーブルに関して紹介させていただきました。
記事をまとめますと下記になります。
PoEのケーブルで迷っている方はPoE対応LANケーブルも選ぶのも良いかと思います。
信号線が太く、電力損失を抑えたLANケーブルならば安定したPoE給電動作が可能です。
是非皆さまもPoE給電を試してみて下さい。
コメント