結構前に紹介したトランジスタ電流増幅率の記事についての続きです。今回は「テスターでトランジスタの直流電流増幅率(hFE)を測定できる仕組み・カラクリ」を紹介したいと思います。
テスターで電流増幅率を測定できましたが、ただ数値を見て正しいかだけの確認では面白くないのでどのように測定されているのか調べてみました
前回記事はこちらから。
電流増幅率を測定している際の電圧を測定してみる
まずは前回同様にトランジスタ2SC1815-GR電流増幅率hFEをテスターが測定している際に実際にVBE,VCEの電圧を確認してみました。
トランジスタの各端子間の電圧を測定する
別のテスターを用意して測定していきます
①VBE(ベース-エミッタ間電圧)=0.68V
①のVBEはデータシートにも書かれているトランジスタ自体の特性となります。(データシートはこちらを参照してください。)
VBEのMAX電圧としては1.0Vですが、VBE-IB特性図より今回ベース流れる電流を想定すると0.7V付近ですので間違ってはいなさそうです。
②VCE(コレクタ-エミッタ間電圧)=2.933V
②のVCE電圧はテスターの内部回路にも影響していきます。おそらく直接内部の3V電源をトランジスタのVCEにつなげているため出ている値ですね。
次の章から①②の結果になった理由をテスターの直流増幅率を分解しつつ調査していきます
テスターの電流増幅率の測定箇所を調査する
まずはテスターを分解して直流増幅率の測定箇所の回路を見ていきます。(分解しないでも「M832」と画像でググっていただければ相当品の回路が見つけれますので有識者の方は見ていただければ大体イメージが付くと思います)
テスターの裏を開けると下記のようになっており直流増幅率箇所は赤枠となっています
赤枠箇所をアップした写真が下記になります
表のテスター箇所と対比させると下記のような形になります
次の章からもう少し回路を追って、今回のテスターの測定回路モデルをイメージしたいと思います
テスターの電流増幅率箇所のイメージ回路図
テスターの直流増幅率測定箇所をアップして調査していきます。各測定端子のポイントを見ると下記のようになります
そして今回測定箇所のNPN箇所に注目すると「C(コレクタ)に直接3V接続」「B(ベース)に220kΩを通して3V接続」となっていました
これで大体の回路図が見えてきました。イメージすると下記のような形です。非常に単純な回路構成となっています
(上記はPNP箇所・電流測定箇所などかなり省略しています、NPNの箇所のみ概略でイメージしていますので参考までにお願いします)
では次章でどのように効率を計算しているかを説明していきます
実際どのように電流増幅率を計算しているか
ここまで来たらベースに流れる電流を簡単に計算できます
①VBEを≒0.7Vとすると
②R1にかかる電圧が3V-VBE=2.3V
③ベースに流れる電流がIB=2.3V/220kΩ≒10uA
ということでIBベース電流は常に10uAが流れるとすればテスター内部でIC電流を測定すれば終了です。
「IC=?A」がテスター内部で測定した値とすると電流増幅率β=IC/IB=「?A」/「約10μA」といった流れでテスターは表示していると考えています
まとめ・感想
1章で測定した電圧を改めて振り返ってみると4章で説明した電圧値となっているので考え方としては大体合っていると思います。「まぁこんなもんか」とイメージしてただければ幸いです
「実務で電流増幅率を測定するケースがあるか?」と言われれば、おそらくそんなに無さそうですね。トランジスタの初歩的な勉強にはちょうどいいネタかとは筆者は考えています
今回はここまでにしたいと思います。どうもありがとうございました
次回は今回のトランジスタを回路モデルでシミュレーションを行いました。リンク先はこちらです。
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