今回は前回紹介した12V24V電源の記事についての続きです。
もう少し踏み込んで「昇圧型のDCDCモジュールの詳細」や「可変抵抗と出力電圧の関係」を紹介します
前回記事はこちらから
今回の昇圧型DCDCモジュールのブロック図
前回も簡単に紹介しました昇圧型DCDCモジュールです。
今回はブロック図にどの部品が該当するかを説明していきます
※これは筆者の主観の説明でメーカの説明ではないので参考扱いでお願いします
下記が写真とブロック図に各部品で色分けしたものです
<<各部品の説明>>
「VIN+」「VIN-」 ・・・入力端子(2V~24Vまで入力可能)
「MicroUSB」 ・・・MicroUSBコネクタ(5V,GNDをVIN+,VIN-に接続)
「C1」 ・・・入力コンデンサ(容量分からず)
「U1」 ・・・昇圧用のDCDC_IC(型番:B6287D)
「L2」 ・・・昇圧用のインダクタンス(22uF)
「D3」 ・・・昇圧用のダイオード(型番:SS34)
「R1+R2」 ・・・FB用抵抗(R2が2.2kΩ,R1が可変抵抗100kΩ)
「C2」 ・・・出力コンデンサ(容量分からず)
「OUT+」「OUT-」・・・出力端子(5V-28Vまで出力可能)
初見の方は「どこが昇圧回路?」となると思いますが「U1」「L2」「D3」が昇圧回路となっています。教科書通りの昇圧回路のブロック図を抜き出して現実のパターンに合わせると下記になります。
おそらく教科書は下記のような形で書かれていますので比較すると上下反転して入力・出力をクロスした配線になっています。U1の1ピンが下記のスイッチングするFETに該当します
昇圧回路の仕組みに関しては「昇圧回路」でググれば丁寧な記載のサイトが何個もありますので省略したいと思います。次の章ではU1のDCDC_ICのピンについて説明していきたいと思います
昇圧DCDC_IC(B6287*)の各ピンの説明
今回の昇圧型DCDCモジュールはU1:IC(B6287*)で制御されています。このICについて機能を簡単に説明します。ICとしては6ピンSOT-23パッケージとなっています
<<U1各ピンの説明>>
「B6287*」でググってもデータシートには全くたどりつけないのですがある程度記載されている中国のIC販売サイトがありました。リンク先はこちらを参照してください
上記のピン説明で十分だと思いますが、あえてコメントしますと下記のようになります
・1ピンでスイッチングして昇圧回路を構成。
・2ピンはGND接続のため「VIN-」「OUT-」と共通プレーンに接続
・3ピンに対しては出力後の電圧をFBして指定の電圧値に制御。
・4ピンはEN端子で出力のON/OFFを切り替えれる端子。
(OPEN状態となっていて常にHi_ON状態にしています)
・5ピンは電源IN端子で「VIN+」からC1の入力コンデンサを通して電源入力。
・6ピンはNC端子で未接続。
IC自体の機能としては、低電圧ロックアウト・ソフトスタート含めて色々搭載しており、またDCDCとしての重用な機能としても下記が搭載されていました。
次の章から今回のIC3ピンのFB端子とその前段の抵抗(R1,R2)について説明します
出力電圧の計算式
今回の出力電圧はIC3ピンのFB端子に入ってくる電圧で決まってきます。
※これも筆者の主観の説明でメーカの説明ではないので参考扱いでお願いします
計算式としては下記となり、FB抵抗の可変抵抗で出力電圧が決まることが分かります
VOUT = VREF × (1 + R1/R2)
= 0.6 × (1 + A/((100-A)kΩ+2.2kΩ))
※A ・・・可変抵抗100kΩ_1-2区間
※(100-A)kΩ ・・・可変抵抗100kΩ_2-3区間
1章のブロック図のFB抵抗箇所をより詳細に記載すると下記イメージとなります
出力電圧を2例ぐらい挙げますと。下記のような可変抵抗の設定が必要になります
前回も説明しましたが、可変抵抗のツマミを右回し(時計回し_CW)して1-2区間の抵抗値を上げていきます
①約12Vにしたい場合は可変抵抗100kΩ_1-2区間を約97kΩ
VOUT = 0.6 × (1 + 97kΩ/((100-97)kΩ+2.2kΩ))
≒ 11.8V
②約24Vにしたい場合は可変抵抗100kΩ_1-2区間を約99.5kΩ
VOUT = 0.6 × (1 + 99.5kΩ/((100-99.5)kΩ+2.2kΩ))
≒ 22.7V
出力電圧の調整が難しいカラクリ
3章の最後で約12Vと約24Vの計算式例を出しましたが、約12Vと約24Vの抵抗値の違いとしては2.5kΩしかありません。この詳細について下記で記載していきます
横軸を可変抵抗_A kΩ(100kΩ_1-2区間)
縦軸を出力電圧_VOUT(V)
で今回の計算式を表・グラフにすると下記になります。
上記の表を見てもらって分かるように青枠の「90kΩ~100kΩ」で出力電圧が「約5V⇒約28V」と急上昇します
この可変抵抗の有効回転数が100kΩ_25回転とするとこの青枠は2.5回転分しかなく出力電圧の微細な調整が難しくなっている理由となっています
ちなみに青枠の90kΩ~100kΩのアップした表・グラフが下記です。ここからも100kΩ間際で電圧が急上昇していることが改めて分かります。
今回はここまでにしたいと思います。どうもありがとうございました
次回は実際に負荷をかけての評価です。リンク先はこちらからです。
また上記の可変抵抗に関してより詳細な記事を追記しました。リンク先はこちらから。こちらもぜひ見てください。
コメント
こんにちは、DCDCモジュールの詳細を調べている中でこちらのページにたどり着きました。
大変詳細に検証されており、参考になりました。ありがとうございます。
ところで当該製品を4つ購入済みなのですが、うち1つは確かに可変抵抗を回転させたときの
電圧変化が記事の中でおっしゃられているように急激に変化するものの、残り3つはほぼリニアに変化します。
よくよく確認すると急激に変化する1つは可変抵抗器表面の印字が別記事中の物と同じ"177C"と
書かれているのに対し、残り3つは"302B"と書かれていました。
恐らく印字末尾のCとBはそれぞれCカーブとBカーブを表しているものと思いますが、
だとすると当記事グラフの逆関数に近いCカーブ可変抵抗を用いた個体の方がリニアな特性を
示そうな気がしますが、実態とは乖離しています。
このあたりについて、意見をお聞かせ願えないでしょうか。よろしくお願いします。
もりけんさん << ミソジです。
鋭い観点からのコメントありがとうございます。
こちらに関しては記事を起こしました。ぜひ見ていただければ幸いです
http://misoji-engineer.com/archives/6608313.html
概要だけですが、下記に回答します。
>>恐らく印字末尾のCとBはそれぞれCカーブとBカーブを表しているものと思いますが、
⇒筆者も分からずじまいでした。
大変申し訳ないですが正直なところ可変抵抗メーカのデータシートが無いと答えれない状況です。
>>だとすると当記事グラフの逆関数に近いCカーブ可変抵抗を用いた個体の方がリニアな特性を示そうな気がしますが、実態とは乖離しています。
⇒ここは筆者も同じ認識です。
Cカーブだったら、12V⇒24Vの上り方がもう少しリニアになると考えています。
ですが現実はどちらかというとBカーブよりな結果となっています。
詳細は上記リンク先の記事にて記載しています。
お世話になっております、返信遅くなり申し訳ありません。
わざわざ別記事まで作って検証いただき恐縮です。
言い出しっぺの責務と思い、試しに手持ちの固体の中から
あえて"302B"印字固体のものを、秋月の以下の半固定抵抗と
入れ替えてみました。
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-06113/
スペックシートにもカーブ種別の明記はありませんが、
この手の半固定ボリュームは暗黙でBカーブだと思っています。
張り替えたところピンアサインの関係かノブを回す方向と
電圧が上下する向きが以前と逆になったのに加え、
今度は電圧を下げきる時(時計回り方向いっぱい)に
張り替え前の12V→24Vの時のようなピーキーな変化をしました。
以上のことから察するに、"177C"印字の固体はBカーブで
"302B"印字の固体はAかCかはわかりませんが、とにかく
指数変化カーブのようです。
印字からして秋月でも取り扱っているBOURNS社製半固定抵抗の
バリエーションモデルに違いないのでしょうが、肝心の
"177C""302B"部分の印字についてはやはり何も読み取れないですね。
http://akizukidenshi.com/download/3296W-1-103.pdf
別の商品のスペックシートでは特注品型番についての言及も
あるので、もしかしたらこのDCDCモジュールのものも
特注扱い品なのかもしれません。
http://akizukidenshi.com/download/3006P-1-104.pdf
(BとかCとか本当に紛らわしいので止めて欲しいですが・・・)
「張り替え前の12V→24Vの時のようなピーキーな変化をしました。」は「"177C"個体の12V→24Vの時のようなピーキーな変化をしました。」の間違いです。